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近隣騒音トラブルの対処 |
長引くコロナ禍で自宅にいる時間が増えたこともあり、近隣住民との騒音トラブルに悩む人が増えています。特に集合住宅では、騒音についてのトラブルがつきものです。
今回は、入居者が原因の騒音トラブルとその対処法についてまとめました。
騒音トラブルの解決が難しいのは、音の種類や音量を問わず、どんな音でも騒音トラブルの原因となり得る点です。
一度でも「不快な音」だと感じてしまうと常にその音が気になってしまい、ひどい場合は健康を害することもあります。騒音トラブルは放置せず、早めに対処することが重要です。
話し声やピアノの音など、一般家庭から出る騒音を「生活騒音」といいます。実際にトラブルになった生活騒音には、下記のようなものがあります。
子どもを叱る声やテレビを見て大笑いする声など、人の声は意外と遠くまで響きます。コロナ禍では換気のために窓を開けているケースも多く、これまでは問題にならなかったような声もトラブルの原因となることがあります。また、大人数で集まって騒ぐ声は大きなトラブルの元となりがちです。自分の家の庭で親戚や友人と集まってバーベキューをするときなどは、酒が入っていることもあり、自分で思うよりも大きな声が出ています。
これらの音のトラブルは厄介です。なぜなら音を出している部屋の住人はほとんど気にしていないことが多く、自分が音の発生源となっているという自覚がないからです。さらに集合住宅の場合「上から音が響く」と感じても実は違う部屋だったということもあるため、発生源を突き止めること自体が難しいのです。
家事に伴う音もトラブルの原因として多く挙げられます。昼間よりも夜間の方が音は響きやすいため、特に夜間の家事には注意が必要です。特に掃除機や洗濯機は直接床に衝撃を与えるため、集合住宅での設置や使用には十分な配慮が必要です。
お風呂、トイレの給水音など水回りに関する音も、意外にも気になる方がいます。
目覚まし時計の音や音響機器・楽器の音も、トラブルの元になることがあります。特に技術的に拙いことが多い子どものピアノ演奏などは、他人にはただの騒音と感じます。練習の時間帯にも配慮が必要です。
ペットの鳴き声も生活騒音の一つです。飼い主さんにとってはかけがえのない家族であり、鳴き声を気にしていない方も多いですが、動物に興味のない他人には、雑音にしか聞こえません。
意外と多いのが、自動車などのエンジン音です。深夜寝静まった住宅街に、エンジン音はかなり大きく響きます。
結論からいうと、生活上の騒音を直接規制する法律はありません。なぜなら音の感じ方には個人差が大きく、「どこまでが騒音か」という線引きは非常に難しいからです。例えば騒音計で同じ音量を示したとしても、騒音の内容や時間帯によってストレスの度合いは違ってきます。たとえば同じ洗濯機の音でも、午後1時と午前1時に響くのではストレス度合いが大きく異なるように、同じ音でも聞こえる時間帯によって騒音となることがあるのです。
また生活騒音を規制するということは、日常生活に規制を加えるということにつながるため、法律や条例で一律に規制をするというのは難しいです。
ただし、生活騒音が一般的に我慢できる限度を超えている場合や、生活騒音によって健康被害が出ているケースなど、例外的に下のような法律が適用となることがあります。
刑法には騒音を直接的に規制する規定はありませんが、明らかに騒音が原因で健康被害を起こした場合には、傷害罪が認められることがあります。
民法にも騒音を直接規制する規定はありません。ただし、騒音が明らかな原因となって実害が出ているという場合は、騒音の発生源となっている人に対して不法行為に基づく損害賠償を請求できる場合があります(民法第709条)。
もっとも、騒音によってどのような損害が生じたのか、またその損害が騒音に起因するものであるのかなどを客観的に証明する必要があるため、損害賠償請求が認められるハードルは高いといえます。
軽犯罪法第1条14号には「『公務員の制止をきかずに、人声、楽器、ラジオなどの音を異常に大きく出して静穏を害し近隣に迷惑をかけた者』は、拘留又は科料に処する」と定められています。「公務員の制止をきかずに」ということが要件となっていますので、まずは警察官などの公務員から制止してもらうことが必要です。
都道府県・市町村などの自治体が独自の条例を制定しているケースは多いです。ほとんどの条例に罰則がないので違反しても取り締まることはできませんが、あまりに程度がひどい場合は、迷惑防止条例違反として逮捕されることもあります。
自治体によっては相談窓口を設けている場合も多いので、まずは一度相談してみると良いでしょう。また、騒音計の貸し出しを行っている自治体もあります。
騒音でお困りの方に、やっておいた方が良いことを3つに分けて説明します。
騒音トラブルの解決には、音が出ている場所を特定することが大事です。集合住宅では音が響くこともあり、思ってもいなかった部屋が音の発生源であるということも少なくありません。音の発生源を間違えてしまうと、大きなトラブルとなります。
騒音が起きた日付や時間帯、どんな音がどのくらいの時間続いたか、どの方向から聞こえてきたかを記録として残しておくといいでしょう。
可能であれば録音できると良いのですが、耳では聞こえても機械の記録には残らないことが多いこと、また一瞬の音を記録し損ねるということもあり、騒音の録音は意外と難しいことが多いです。
客観的な音の大きさを測定しておくことはとても大切なことです。騒音計で音の大きさを測ってみましょう。安価なものなら数千円で購入できますし、スマートフォンの騒音計アプリでも測定することができます。また、自治体によっては、無料で測定器の貸し出しを行っている場合もあります。
ご近所さんに、騒音で困っていることがないか聞いてみるのも良いでしょう。自分一人だけが困っている場合は、管理会社などもあまり親身になって対応してもらえないこともありますが、ほとんどの住民が困っているのであれば、快適な住環境を脅かすものとして対処してくれることが多いです。
騒音トラブルは、自分が訴える側になることもあれば、逆に訴えられる側になることもあります。いずれの場合も、今後もその家に住むつもりであれば、冷静に対処することが大切です。
大切なことは、当事者間での話し合いは避けることです。直接話した方が、困っていることを理解してもらえて簡単に騒音が止まるようにも思えますが、話はそこまで単純ではありません。当事者間で話すことで、むしろ大きなトラブルに発展してしまうことも少なくありません。無用なトラブルを避けるためにも、直接話をするのはやめた方が良いでしょう。
集合住宅の場合はまずは管理会社や管理組合に、一軒家の場合は町内会長などに相談してみましょう。
ただし実際のところは、騒音トラブルに積極的に介入してくれる管理会社や管理組合はあまり多くはありません。管理会社や管理組合の管理対象は原則として共用部分(廊下やエントランスなど)であり 、専有部分(各住戸など)は対象外だからです。そして、騒音問題は共用部分に広く影響を及ぼしている場合は別として、原則として専有部分(各住戸など)間の問題です。そのため、 管理会社や管理組合が積極的に関与しないケースも少なくありません 。それでも「相談した」という記録を残しておくことが重要な証拠となったケースもありますので、まずは相談してみることをお勧めします。
騒音の程度があまりにもひどく耐えられない程度であり、日常生活を送るのに支障が出ている場合、そして管理会社・管理組合などの第三者を含め申し入れをしても改善がない場合には、警察へ通報しましょう。
騒音トラブルは、放置すると損害賠償請求などの法的措置に発展する可能性もある深刻な問題です。一度弁護士に相談してみるのも良いでしょう。裁判までは考えていないという場合でも、弁護士に代理人を依頼することで相手との直接対決を避けることができます。相手との対応やトラブルの解決は弁護士に任せ、相手の怒りが自分や家族に向かないよう注意することが重要です。
集合住宅の騒音トラブルを穏便に早期解決しようと思うなら、早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。裁判までは考えていないという場合でも、騒音トラブルを解決するための法的なアドバイスを受けることができます。
この記事を監修した人
平松剛法律事務所 東京事務所
https://www.hiramatsu-go-law.com
弁護士
小林 義典 Yoshinori Kobayashi
弁護士は敷居が高いとお考えの方もまだまだ多いと思いますが、些細なご相談から思いがけない解決を導けることも多くあります。
ご自身だけで抱え込まずに、是非一度ご相談いただければと思います。
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